BLOG 世界の都市と鉄道

YAHOO BLOGの「世界のニュース時評}(2009-2019)と「経済投資市場情報を多言語で」(2018-2019)の中から写真付きの投稿のみ選んでこの、はてなブログに移行させました。

若山牧水 みなかみ紀行

短歌「幾山河越えさり行かば 寂しさの; 終てなむ国ぞ 今日も旅ゆく」などで著名な若山牧水。彼の一生を辿るほど、ますます彼が好きになっていきます。短歌を吟じながらの寄稿文「みなかみ紀行」も一読の価値のある作品。私は最近、岩波文庫池内紀編)で読みました。この文庫に収録されている紀行文は以下の12作品です。

枯野の旅 津軽野 山上湖へ 水郷めぐり 吾妻の渓より六里が原へ みなかみ紀行 空想と願望 信濃の晩秋 白骨温泉 木枯紀行 熊野奈智山 沼津千本松原

「山上湖」は、伊香保榛名山を旅した記録。「吾妻の渓より六里が原へ」「みなかみ紀行」には草軽電鉄に関する記載があり、注目。前者は乗車した件、後者は乗り遅れた件が書かれています。「吾妻の渓より六里が原へ」には、川原湯の旅館で芸者らしき女性2人と混浴した話とか、当時草津にあった癩病患者のための療養施設での治療もうまくいかず絶望しながら馬車で帰宅する人の侘しい話とか出てきます。「みなかみ紀行」では、表題の水上には寄りません。その旅の以前の旅の回想として出て来るだけです。おおよそのルートは、佐久>草軽電鉄>草津花敷温泉沢渡温泉四万温泉>沼田>猿ヶ京>法師温泉>老神温泉>丸沼>菅沼で、金精峠から日光湯元を見下ろし、付き添いの人と別れて坂道を下るシーンで終わっています。四万温泉には現存する旅館T(原文では実名)が登場しますが、旅館側のやり口がえげつなく、どんなあばら家に泊まった時でも文句を言わない牧水が怒りを込めてその時の状況を語っているのには呆気にとられました。毎日一升酒だったという牧水は、山深い菅沼の辺りに泊まった際にも、大雨の最中にもかかわらず宿屋に酒を出すのを要求し、宿の幼子がずぶぬれになりながら酒を買ってきます。本当にかわいそうですが、牧水の心の内面がドラマチックに描かれていると思いました。